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奏人はサイドテーブルから香水を取ると、自分の手首につけた。
手首は私の方へゆっくりとのばされ、首筋にぴたりと当てられる。
驚いて肩を上げると、奏人は「じっとしてて」と囁いた。
狡猾で、罠を仕掛けるような瞳。
手首が首筋を撫で、指先が髪を弄る。
躰の奥がじんわりと疼いた。
甘い香りに酔わされ、そこは解放されたように濡れていく。
「これで同じ香りだね」
「……うん」
「ところで、理香ちゃんに聞きたいことがあるんだけど」
突然、射るような鋭い視線を向けられた。
磔にされてしまい、動けない。
心臓だけがドクドクと早鐘を打つ。
「理香ちゃんは、俺のこと知ってた?」
正直に言えるわけがない。
いつも見ていたなんて、言えるわけがない。
「俺は理香ちゃんのこと知ってたよ」
「え……」
「俺のこと、いつも物欲しそうに見てたよね」
視界が一瞬で、ぐるんと変わった。
私を見下ろす奏人と天井が見える。
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