金木犀とオレンジと犬

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「背中、こっちに向けて」 言われたとおり奏人に背を向けて両手で髪を持ち上げると、ネックレスはすぐにつけられた。 手慣れている……よく女の子にネックレスをつけてあげるのだろうか。 そう思っていると、生温かい柔らかな感触が首筋に被さった。 振り向くと同時にすぐさま両手首を抑えられ、躰の自由を奪われる。 首筋に被さった唇は皮膚をきつく吸い上げていく。 「奏人、見えるところに痕は」 「聞こえない」 言葉と躰で抵抗すればするほど、手首を掴む力も首筋を吸い上げる力も強さを増す。 男である奏人に力で敵うはずがない。 そうだとわかっていても抵抗するのは止めて欲しいからなのか、もっと強く酷くして欲しいからのか。 奏人が纏う甘やかな金木犀とオレンジの香りは、馬鹿な私をさらに馬鹿にする。 抵抗を続けているうちに手首には爪が食い込まされ、首筋には歯を立てられた。 抗う言葉は吐息へと変わり、全身が甘く痺れていく。
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