落下した十九の冬

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「上手くなった」と言って、私を撫でる大きな手。 もし私がもっともっと上手くなったら、奏人も少しは私に感情を持ってくれるかもしれない。 馬鹿馬鹿しいかもしれないけれど、本気でそう思った。 私が奏人に持つ感情の百分の一だっていい。 それでもいいから私に感情を持って欲しい。 「出そう」 頭上で呟かれた言葉に私は小さく頷き、白濁したものを咥内で受け止めた。 すべてを呑み込むと唇の端から零れそうになり、急いで指先で拭う。 「どういう味がすんの?」 指先をしゃぶる私に奏人が訊ねる。 どう答えたらいいか考えているとペロリと唇を舐められた。 「うわ、まっず……。 お前、よくこんなもん飲めるな」 苦虫を噛み潰したような、蔑むような。 なんとも言えない顔をされた。 美味しいとは思わないけど、吐き出したいとは思わない。 だって奏人の一部だから。 「本当に、呆れるくらい馬鹿」 人差し指で私の髪を弄りながら、奏人は呟いた。
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