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「上手くなった」と言って、私を撫でる大きな手。
もし私がもっともっと上手くなったら、奏人も少しは私に感情を持ってくれるかもしれない。
馬鹿馬鹿しいかもしれないけれど、本気でそう思った。
私が奏人に持つ感情の百分の一だっていい。
それでもいいから私に感情を持って欲しい。
「出そう」
頭上で呟かれた言葉に私は小さく頷き、白濁したものを咥内で受け止めた。
すべてを呑み込むと唇の端から零れそうになり、急いで指先で拭う。
「どういう味がすんの?」
指先をしゃぶる私に奏人が訊ねる。
どう答えたらいいか考えているとペロリと唇を舐められた。
「うわ、まっず……。
お前、よくこんなもん飲めるな」
苦虫を噛み潰したような、蔑むような。
なんとも言えない顔をされた。
美味しいとは思わないけど、吐き出したいとは思わない。
だって奏人の一部だから。
「本当に、呆れるくらい馬鹿」
人差し指で私の髪を弄りながら、奏人は呟いた。
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