落下した十九の冬

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大学では相変わらず話すことも、眼を合わせることもしなかった。 私がそうしようと言ったわけでも、奏人がそうしようと言ったわけでもなかった。 私はこれまでのように奏人と奏人の隣で親しそうにする女の子を遠目から眺める。 華奢なアクセサリー、取れてしまったのであろうネイルチップ、中身の減ったコンドーム。 アパートへ行けば他の女の子が奏人とここで過ごした何かしらの痕跡がある。 奏人はそれを隠したりはしない。 潔いと言えば潔い。 もし私が「会っていない間にコンドームが減ったね。どうして?」と聞けば、奏人はきっと「他の子と使ったから」と感情なく答える。 奏人に他の女の子のことや、自分との関係について聞いたことはない。 聞いてしまったら、きっとめんどくせぇ女になる。 めんどくせぇ女にならなかったとしても、きっと胸が痛くなるような答えが返ってくるだけで何もいいことはない。
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