落下した十九の冬

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この関係が始まって、もうすぐ一年。 私はずっと願っている。 ―――奏人の胸の中で、殺して欲しい。 そしたら次はいつ会えるかなんて考えなくてすむし、いつ関係が終わってしまうかなんて怯えなくてすむ。 コンドームの数を数えたり、落ちている髪の長さを気にしたりすることもない。 「もういらない」と言われる前に。 暗闇に呑まれてしまうその前に。 束の間の幸せでいられるあの胸の中で、甘い香りに包まれ、きれいな顔を見ながら死んでいきたい。 これ以上の素晴らしい安楽死は、馬鹿な犬にはない。
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