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イッツ・ア・ドッグショー
「起きてよ、理香」
芽衣子に揺さぶられ、辺りを見渡す。
講義はもうとっくに終わっていた。
瞼がまだ重い。
どうしても下がってしまう。
「はい、これ食べて」
眠気覚ましのミントを差し出される。
手のひらに三粒出すと、芽衣子はそこに十粒ほどのミントを追加した。
「え、こんなに?」
「こうでもしないと目、覚めないでしょ。
今の顔、なんていうかブス」
なんていうかブスの私は大人しくミントをガリガリと砕いた。
かなり刺激が強い。
口の中はスース―するというより、もはや痛い。
「ブスじゃなくなった?」
「うん、かわいいよ。
かわいいけどさ、すごくバカトの匂いがする。
それにキスマークも見える」
咄嗟に首筋を手で隠す。
友達のキスマークなんて見たいもんじゃない。
相手が奏人なら尚更。
「……ごめん」
「いいよ、別に。
さすがに一年も経ったら慣れた」
子どもの悪戯を許すような顔で芽衣子は目尻を下げた。
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