イッツ・ア・ドッグショー

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ふわふわしたゆき乃ちゃんに、正統派美人の芽衣子。 二人が並ぶととても絵になる。 それに二人は容姿だけでなく、頭までいい。 「天は二物を与えず」なんて間違っている。 たくさん与えられている人もいれば、まったく与えられていない人だっている。 私も、与えられている側の人間のつもりだった。 体育の成績はひどいものだけど、幼い頃からそれ以外は常に上位をキープしていた。 担任からはクラスのまとめ役を任され、友達も多かった。 大学に受かったとき両親は「自分たちの子どもがこんな大学に受かるなんて」と、歓喜の声を上げた。 これからどんな生活が始まるのかと、未来に期待と希望を抱いて私は上京した。 十八才の私は、自分は社会において「上の方の人間」だと思っていた。 だけど現実は、そんなに甘くはなかった。 授業の内容は不思議なくらい頭をすり抜け、すぐについていけなくなった。 ―――何がわからないのかも、わからない。 高校時代に同級生が言っていた言葉の意味がわかった。
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