イッツ・ア・ドッグショー

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「理香って、ゆき乃の前だとあんまりしゃべらないね」 芽衣子は五つ目のチョコレートの包みを開けながら言った。 「そんなことないよ」 「ゆき乃に限らず、理香はもっと周りと話せばいいのに。 もったいない」 そう言われても、こびり付いてしまった劣等感は落とせない。 私は誰とも対等じゃない。 いくつもいくつも下のカーストにいる。 「うまそう。 オレにもちょうだい」 明るい声と同時に長い腕がチョコレートに伸ばされた。 「ちょっと鳥谷(とりたに)。 まだ良いって言ってないんだけど?」 「まぁまぁ、これあげるから」 ピシャリと制する芽衣子にめげることなく、鳥谷くんは笑顔でコンビニの袋を差し出した。 鳥谷くんは授業が被るとよくこうして話しかけてくる。 私が唯一、奏人以外で関わりのある男の子。 差し出されたコンビニの袋にはグミが四つも入っていた。 それに、辛口のスルメも。
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