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彼──長沼 秀明は、自らの想いを遂げるため、憎むべき相手を殺す計画を入念に練っていた。
……毒殺は、どうだろうか? いや、それでは、入手ルートから足がつく。闇サイトへの依頼も考慮したが、もしも殺しを請け負った相手が逮捕されるようなことになれば、元も子もなかった。かといって、自分が男の部屋へ押し入って犯行に及ぶのには、部屋への侵入方法や逃走経路の確保などを考えても、リスクが高すぎるように思われた。
だとすれば──と、長沼は考えを巡らせた。こういうのは、どうだろう? 例えば男を待ち伏せして行きずりに殺し、山中にでも埋めてしまうのは意外に得策なのではないだろうか。それなら男の行方が知れない限り、本人が失踪をしたと周りに思わせることも出来て、すぐには自分自身へ疑いが及ぶこともないはずだ。
いい考えだ──。死体さえ見つからなければ、簡単に己にまで捜査の手は届かないはずだ──。
そうだ、それでいい。自分はなんて頭がいいんだと、長沼は一人ほくそ笑んで、男の住む最寄りの駅から家までのルートで、人目につかず殺せそうな場所を綿密に調べ上げることにした──。
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