12/12
前へ
/91ページ
次へ
「なぜ、こんなことに……」 鮫島裕樹の殺人事件の重要な手がかりだったはずの花村由実が遺体で見つかったことで、刑事である片山は、事件が行き詰まったことを感じていた。 「一体、誰が、誰を殺したって言うんだ……」 捜査をしてきた全ての人物に一面識すらもないまま、連続して起きた殺人の不条理さに、「……くっ」と、周囲に聴こえないよう悔しげな声を喉元から漏らすと、片山はやり切れない思いで拳を固く握り締めた。 事情を知るような者が誰一人として見当たらず、不本意ながらも、この事件は迷宮入りもまぬがれないだろうことを、片山が苦く感じていた頃── 朽ち果てた寒々しい廃村で、元から埋められていた穴にどさりと音を立てて落ち切った多々良の遺体には、舞い散った枯れ葉がひっそりと降り積もっていた……。 ──終
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

104人が本棚に入れています
本棚に追加