2話

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バンバンバンッ!! しんと静まり返った森の中、何かを叩き続ける音が響き渡った。 思ったよりも動けると思ったが雪山を全力で下るのは相当な体力を使う。呼吸を整えることに必死な村長は声が出せず、少女を何とか片手で抱え扉を叩くことで精一杯だった。 なかなか老夫婦が出てこず、体力の限界を感じ扉を壊す勢いで叩いているとようやく老夫婦が顔を出した。 状況を理解できていない老夫婦にまた腕の中で気を失ってしまった少女をずいっと差し出して村長は息も絶え絶えに言葉を紡いだ。 「こ、この子を診てくれ。は、腹に子ども、がいるんだ...。助けてやってくれっ」 今までに見たことがないような村長の必死な顔とその腕に抱えられた青白い顔の少女を見てリント老夫婦初めは驚いたもののすぐに状況を理解して少女の処置を始めてくれた。 なぜ何も知らない出会ってすぐの少女をあんな必死に、老いた体にムチを打ってまで助けたいと思ったのかリント老夫婦に聞かれても村長は、はっきりと答えることは出来なかった。 「あの時は...ただ、ただあの子をひどく羨ましいと思ったんだ。」
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