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1話
生まれて初めて雪を見た日。
私は、お父様とお母様の幸せを奪った。
だから、これはお父様の幸せを願ってのこと。
分かってるよ。分かってる。
なのに...。
どうしてこんなにも涙が溢れて止まらないんだろう。
甘い香りがする花が咲き乱れ、青々とした芝生がキラキラと輝く庭の一角。
昔から交流がある者、これを機に親交を深めようとする者達が8年ぶりに行われる今日の誕生日パーティーにこぞって出席した。
色とりどりのドレスに身を包んだそれら全ての貴族たちが話に花を咲かせながら主役を今か今かと待ちわびていた。
そこから少し離れた木の影。
小さな少女はガタガタと足を震わせ立ち尽くしていた。大きな瞳を潤ませ今にも泣き出してしまいそうな少女は今日の主役、ルーナ·ビータスだった。
今日12回目の誕生日を迎えたルーナはこっそりとメイド達から離れ震える手足を落ち着かせようとしていた。
緊張で震え、泣きそうになっているところなんて誰にも見せられない。
ただ1人を除いては。
「ルーナ様!探しましたよ。」
遠くからこちらにかけて来る女性。
アイリス·ボンデフルだ。
彼女はルーナが幼い頃からビータス家に使えるメイドだ。ルーナの母ソフィアが亡くなってからは専属メイドとなった。
今のルーナにとってアイリスは唯一甘えることが出来る存在だった。
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