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「もっと頼ってください...」
ルーナの元へたどり着き、その震えに気づいた時アイリスは一瞬悲しそうに顔を歪め呟いた。
ところがその呟きは誰にも届かず風に消えていった。
「今日の主役はルーナ様です。もっと胸を張ってもいいんです。あなたはここにいる誰よりも綺麗で輝いているんですから。」
ルーナの真っ白なまろい頬を柔らかなアイリスの手が包む。
水仕事で少しかさついていてでも温かいアイリスの手に包まれていると少しずつルーナは落ち着きを取り戻していった。
「アイリス...。もう大丈夫よ。まだこんなことをされるなんて私、まだまだね 。」
頬を包むアイリスの手にルーナ自身の手を重ね眉を下げる。
その一瞬、アイリスはルーナの瞳に深い深い闇をみた。1度迷い込めば2度と戻ってこられないような暗い、でも誰か連れ出してくれるのを待っているようなそんな闇だった。
そんな闇を振り払うかのようにルーナはアイリスの手を離しいつものように笑って見せた。
「もう行かなきゃね!主役がいないとパーティーは始められないもの。」
アイリスの元を離れ庭へと向かうルーナにはもう先程までの泣き出しそうな少女の面影は何処にもなかった。
アイリスは遠のくルーナを見つめ小さく祈る。
いつか自分の声が彼女に届くようにと...。
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