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村長は、仕切りに鼻をすすり、泣き腫らした真っ赤な目のまま必死に言葉を紡いだ。
約11年前、雪がぱらぱらと舞い、冬の始まりを感じ始めたある日のこと。村中の人々が寝入り、静かな時間が流れ始めた頃
「助けて!誰か、助けてっ!」
少女の泣き叫ぶ声が静寂を切り裂いた。
この村からニイの森が近いこともあり魔獣が現れたのかと、村長を含めた数人の男たちがそれぞれ武器を持って外へ飛び出した。
声のする方に目を向けると、そこには15歳ほどの少女が1人蹲っていた。
「どうしたんだい?なにかあったのかい?」
村長は、少女を怖がらせないようにゆっくりと近づき声を掛けた。
「追われているの!お願いっ、助けて......」
少女は村長の姿を目にすると、汚れることなど気にもせず地面を這いずり村長に縋り付きながら必死に言葉を紡いだ。
そしてそのまま、少女は人に会えた安心感からかそのまま気を失ってしまった。
村長は気を失った少女を支え、地面に倒れる前に抱き止めた。その時、彼女が這いずった地面に微かに積もった雪が赤く色づいているのを見つけた。
よく見ると、少女は足から血を流しており、靴を履いていなかった。
近くに荷物なども見当たらず、少女が体を守るようにぎゅっと握りしめている大きな男物のマントだけが彼女の持ち物だった。
「村長、この子どうします?」
一人の村人が少女を見ながら問う。
突然村の外からきた得体もしれない少女に、村人たちは不信感を抱き、関わりたく無いと誰もがそう思っていた。
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