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「怪我の治療は終わったよ。今は部屋で寝ておるから傍にいておやり。」
日が高く上り村人たちがそれぞれ家を出て活動を始め活気ある声が響き始めた頃、何時間も見つめていた引き戸が、ガラガラと外の声をかき消すくらいの音を立てて開いた。
そして中から人の良さそうな笑みを浮かべたこの村の医者であるボド·リントがでてきた。
ボドに連れられ部屋の中に入るとツンと消毒の匂いが鼻を指した。そこには4つの真っ白なベッドが置かれており、一番端の窓際のベッドで少女は眠っておりその隣でボドの妻であるモゼル·リントが少女の手を握っていた。
村長は、穏やかに眠る少女を見て張り詰めていた気を緩めようやく息を吐いた。
「ボドさん、モゼルさんあんな夜更けに急に訪ねてしまってほんとに申し訳なかった。彼女を診てくれてほんとにありがとう。」
「なぁに、これくらいいいんだよ。これが私たちの仕事なんだから。それにしても、この子を連れてきた時の村長の慌てた顔。あんな顔初めて見たよ。」
ボドはお茶を入れ、一息付きながら村長が訪ねてきた時のことを思い出していた。
「あの時は...」
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