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この歳まで生きてきて嫁を貰わず、もちろん子どももおらず村長という立場になったもののこの村は村人たちの手で十分に守っていける力が十分にあり、村を守る、家族を守るだのという生きる理由というものをとうの昔に無くしていた。
死にたいなどとは思わない。
むしろ、生きれるだけ長く行きたいと思う。
だが、若かった頃のように今を必死に生きることが無くなった。だから、あの時人目も気にせず地面を這いずり必死にこの老いぼれに...いや、命に縋り付く姿を生きようというその姿を羨ましいと思ったんだ。
「そうかい...。」
村長の話を静かに聞いていたボドは優しく微笑んだ。
「昔からの付き合いだがいつからか、時の流れるまま身を任せ、いつも同じような未来を決して映そうとしない貼り付けた笑みを浮かべている村長があんなに必死な顔を見れてわしは嬉しかったよ。もしかしたら、この少女との出会いがお前さんの生きる理由とやらを見つけてくれるかもしれんのぉ。」
村長はベッドに眠る少女をそっと見つめた。
自分をつき動かした何も知らない少女。
ボドが言ったことは何も根拠もないただの彼の願いだということは村長も分かっている。
だが、あの自分を見つめる少女のアメジストのような輝きが、いつか自分も照らしてくれるんじゃないかと淡い期待を抱いていることにただただ驚いていた。
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