第12話 足りないのは

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店員さんはエキスパートだよね。 スーパーでもどこになにがあるかわからない時は聞いている。 ここはさらりと尋ねてみようか。 「あの、すみません。おすすめの恋愛物の本ってなにかないですか?高校時代で私の恋愛観が止まっていて、それを進められるような本がいいのですが」 「おすすめですか?そうですね……」 いつもの慣れ親しんだ店員さん。 BL売り場はあなたが仕切っていることを私は知っている! いわば、この階の首領(ドン)。 私が買いたくなるような素敵なPOPをいつもありがとう。 それにこないだ私が購入したBL本もきっと把握しているだろう。 うんうん、私に恋愛初心者マークがついているのが見えますよね? さあ、私にふさわしい恋愛教本をプリーズ! じいっと期待をこめた眼差しで店員さんをみた。 店員さんのエプロンはこの前と同じ、パンダのエプロンをつけている。 「この恋愛小説なんてどうですか」 『さあ、これをお読みなさい』とばかりにスッと二冊、小説を手渡された。 それを迷うことなく手にした私。 地獄にいた(いろんな意味で罪人な)私は一本の蜘蛛の糸にすがる気持ちだった。
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