第13話 鍋【貴仁】

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クッションが飛んできたのを華麗にキャッチし、すぐに投げ返した。 どむっと晴葵の頭にあたり、悔しそうな顔をしていた。 なんとでも言え。 この社内一周男が! そんな男にあの真面目で清廉な新織を渡せるか。 携帯ゲーム機で『ときラブ』をプレイしながら、俺は言った。 「晴葵。お前も少しはこれで勉強したらどうだ」 「しねーよ!」 「新織と次のデートの約束もしておこう」 「なんでこんなやつと……新織さんが……」 誰がこんなやつだ。 「晴葵、お前に質問だ」 「ん?」 俺はおもむろに『ときラブ』の画面を晴葵に見せた。 「デートの誘い方で正しいのは?」 →【龍空(りく)。次はいつ会える?】  【龍空。今日は楽しかった。ありがとう】 「上かな」 晴葵の選択肢を選ぶ。 画面上の龍空の表情は曇る。 龍空『……少し考えてからでもいいかな』 困惑顔の龍空と同じく困惑顔の晴葵。 「は?なんでだよ?さっさと次のデートの約束したほうがいいに決まってるだろ!」 「お前はもっと女心を学ぶんだな」 「うわっ!なんか腹立つな!」 ワンクッション置いてからのデートの誘い。
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