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お客にお釣りを渡してすぐ、陽菜子が私に耳打ちをした。
「杏さんのお客様だから、杏さんがお渡ししてください」
私は陽菜子から商品が入った紙袋を奪い、「お待たせ致しました」と、微笑みながらお客に渡す。
お客は私から商品を受け取るも、陽菜子の方を見て「ありがとう」と口を開いた。
入り口で見送ろうとすると、振り返ったお客が陽菜子に手を振っていた。
「ありがとうございました」
私はそう言いながら深々とお辞儀をするが、お客は無視。
『お前には用がない』、贅肉がたっぷり蓄えられた背中が、そう語っていた。
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