第4話 会議に出席。

1/1
前へ
/575ページ
次へ

第4話 会議に出席。

       ◆◆◆  城内の会議室。  計六名が、石製の白い円卓を囲む格好で出席している。  スフィーダの左から、ヨシュア、太っちょのウィンストン・ローゼンバーグ中将、ひげが自慢のカール・シュナイダー中将、頬に大きな傷のあるリンドブルム・ヴァゴ中将、四角い眼鏡のティーム・ブラック情報部長という並びである。  議題は、今後の侵攻と防衛について。  防衛はしなくてはならない。  国民の権利、財産が奪われるようなことがあってはならないからだ。  しかし、侵攻はいかがなものか。  実際、このような会議の場においては、以前からスフィーダは、「戦争反対! 戦争反対!」と意見してきた。  そうした結果、周りのみなに、しばしば「陛下、ご理解ください」と言われてきた。  ヒトの営みはヒトに任せる。  そのスタンスは崩せないし、女王という立場は象徴でしかないのだから、スフィーダは諭されるたび、「むぅ」と口をとがらせ、無理やりにでも自分を納得させるしかないのである。  とはいえやはり、いつもいつも思うのだ。  なんのために領土を広げなくてはならないだろう、と。  なんのために侵略戦争を起こさなければならないのだろう、と。  今いる国民が幸せであればよいではないか。  今ある平和を保つことができれば、それでよいではないか。  しかし、たとえば隣国がひどい独裁政権下にあり、民の人権等が縛られ、蔑ろにされているようなことがあるのであれば、それは救ってやらねばならないとも考える。  だから、侵攻だって、一概にダメとは言えない。  難しいところなのである。  ティーム情報部長が、現在のプサルムを取り巻く状況を一通り説明すると、「そろそろ北に侵攻してもよい頃合いかと考えます」と締めくくった。  北には小国が三つ、横並びになっている。  西から数えて一つ目と二つ目の国は、実質的にプサルムの同盟国だ。  ヒトの交流もあり、貿易も円滑に行われていると聞いている。  だが、最も東の国だけは、なんというかいけない。  ちょくちょく、ちょっかいを出してくるのだ。  プサルムとは天と地ほどの国力の差があるにもかかわらず、だ。  それこそ、独裁政権とのことなので、とにかく領土の拡大を図りたいのだろうか。  あるいは、無鉄砲なだけなのだろうか。  それでもスフィーダ自身は、話せばわかり合えると思っている。  できることなら、会談の場を設けてもらいたい。  しかし、それはきっと出しゃばりな行動だ。  やはりヒト同士で対話するのが、あるべき姿なのだ。  突然、叩き上げと言っていいリンドブルムが、「メルドーを使おう」と発言した。  瞬間、スフィーダの肩も心臓もドキッと跳ねた。  それが誰にも気づかれていやしないかと心配で、左右に顔を向けたりした。  よかった。  気づかれてはいないらしい。  ティームが「フォトン・メルドー少佐のことですか?」と訊くと、リンドブルムは「俺がメルドーといえば、フォトンしかいないだろう?」と答えた。 「フォトンは西部の警備を担当して久しいはずですが?」  そう発言したのはヨシュアだ。  するとリンドブルムは、「今までこれといった懸案事項がなかったから、遊ばせておいただけだ」と述べ、「奴を呼び戻す。その上で新たな命令を与え、北の件を一任すればいい」と続けた。  その後も会議は続いたのだが、スフィーダは、ぽーっとしていた。  会話が耳に入ってこなかった。  そうか。  フォトンを呼び戻すのか……。  多分、会うことくらいはできるだろう。  そう考えると、スフィーダの胸は、またドキドキし始めたのだった。
/575ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加