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ビッチ初心者。
金曜日の22時。
目が眩む程のネオンに圧倒される。
襟足を綺麗に切り揃えうなじを覗かせたショートボブに、首周りが肩まで開いたユルTとショートパンツ。
清楚な女が好きな男にはウケないだろうが、繁華街で一晩一緒に居てくれる男を探すにはそんなに悪くないコーデだろう。
その戦闘服で自身を奮い立たせ、煌々と輝く電飾の中を今まさに闊歩している所だ。
今日はビッチ活動、略してビッ活の第一歩を踏み出した記念すべき日である。
と、そう意気込んでうろつき始めて早3時間。
一向に私に話し掛けてくる者はいない。
はて、どうしてだろう?
世のチャラ男さん達!
ココに空いてるビッチ、居ますよ!
と、叫びたい衝動をグッと抑える。
先程、BARデビューした時も、オシャレなカクテルなどを嗜みつつ、イイ女風の雰囲気を無駄に振り撒いてみたのだが、誰にも見初めては貰えなかった。
歩きつつ一人で反省会をする。
もしかすると、お行儀良く待つ姿勢が敗因だろうか?
肉食女子なんて言葉を覚えて久しい。
今は女からガンガン行く時代なのかもしれない。
それとも純粋に見てくれが良くないとか…?
急に不安になってきた。
慣れない夜の街。
ふと路駐している車のスモークに目がいき驚く。
そこには酷くやつれ、悲壮感を漂わせつつも、目だけが異様にギラついている痛々しい女が一人。
よく見れば自分ではないか。
道理で誰も声を掛けてこない筈だと、残念ながら腑に落ちてしまった。
ビッチ初心者。
ここにきてやる気が空回りである。
早い所、もっと緩い感じを醸し出さなければ、収穫なく一人ぼっちで朝を迎えてしまうだろう。
それではビッチ活動ではなくボッチ活動、略してボッ活だ。
私はボッ活ではなくビッ活をしたい。
速やかにこのギラついた目をどうにかしなくては…。
漫喫にでも入ってメイク直しをし、反省点を考慮して立て直すしかない。
辺りを見渡すと、少し先の雑居ビルから飛び出ている「漫画喫茶」と書かれた看板に目が留まる。
よし!
私は一歩踏み出した。
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