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「……うちら女バスだって余裕でただ構えてるだけじゃないよ」
「へ?」
不意に耳を離されてその声の張りも薄れる。
「今までずっと優勝してきて、周りも優勝すると思ってるのに負けたら?そんなこと思っちゃったら一気に持っていかれそうだから勝つ!!って言い続けてる」
優愛はフーっと息を吐くと、不安はそのまま息と共に吐き出したように迷いなどない目でしっかり前を見ていた。
「優華……」
俺は何でこんなすぐに消え入りそうな声しか出ないんだろう。
「いくら容赦ないって言われようと20点差つけてきっちり勝ちを決める試合運びをしてる」
グッと歯を食い縛ったその姿を見て、俺は白くなる程握られたその拳を見つめた。
生まれた時からいつも一緒で何でも俺より器用にこなした優華。
中学に入って俺の方が身長は伸びたし、足も速くなったけど勉強も部活も優華はいつも結果を残していた。
「ちゃんと勝ってよ」
自信に満ちたような顔でこっちを見られて俺も頷く。
「大丈夫。女バスが試合先でしょ?勝っていいイメージつけてあげるから、その波に乗りなよ!」
笑いながら手のひらを見せられてそこにパチンと手を合わせた。ピッタリと合ったその手は俺より一回り以上小さい。
負けず嫌いで諦めが悪くて……優華はこの小さな手を握り締めて、ずっと歯を食い縛ってきたんだろうか。
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