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★ ★ ★
ロッカー外部の観察者たちは、どちらもその様子を黙ってみているだけだった。
目論見が成功したはずのリリーすらも、見入るように、絶え間なかった妄想すら止まっている。
強いて言えば、荒い息を漏らしているのはヴァルカンの方だった。
わずかに内またになって、なんども息をのんでいる。共有されている視界、ロッカー内部で繰り広げられる仲間たちの痴態が、彼女の内面を蝕んでいたのだ。
(二人が、あんな風に。こんな、こんなことって……)
十五分の約束など、すでに彼女の記憶からは抜け落ちている。
締め付けられるような切なさを持て余し、ひたすらに熱い吐息を繰り返していた。
★ ★ ★
十分に高まった性感は、すでに飽和しつつあった。
多幸感とともに、両者の片方の手がアレースの銃を握りしめる。目的を忘れていなかった……というよりは、それさえも一つの愛撫でしかなかった。
あふれ出る生命力の奔流を、二人ははっきりと。個々であった時よりも、かえって鮮明に感じ取っていた。星の銃はいまは、その流れが行き着く目的地でしかない。
「ふああ、うぇぬ、ヒメカ、ヒメっ」
朦朧としたアレースが、ウェヌスよりも変身前の少女を呼ぶ。
相手の指はすでに布の間から侵入し、肉襞を味わっている最中だ。
「かわいい、ああ、あなたをこんなに求めてしまうなんて……!」
ウェヌスはたまらないように、アレースの喉元へとむしゃぶりつく。もはや口づけだけでは物足りない。汚し、犯し、一つになってしまいたい欲求に突き動かされていた。
同時に女陰に沈み込んだ指が、大きく、そして的確に一点を責め始める。それはウェヌスがこの短い間に発見した、アレースの弱点だった。
「ああっ、だめ、だめだよっ、飛んじゃう、飛んじゃうからっ!」
内側の弱い部分を責められたアレースが、にわかに喚き始める。
ウェヌスはそんな彼女に微笑みかけ、さらなる刺激を加えていった。
「大丈夫。しっかり、わかっていますから、この感覚、ずっと……!」
「ああ、あああああ!!」
達するが早いか、アレースは絶頂の波と共に愛液で下半身を汚してしまう。
入り込んでいたウェヌスの指にも当然それはかかる。きつく締まっていた膣の肉が緩まるまで待ってから、彼女はそっと先兵を引き揚げさせる。
引き抜かれた美しい指は、粘ついた透明な液体のおかげで、暗がりでも光沢を放っていた。
感じていた熱量と自分の指の状態が一致すると、ウェヌスもびくりと背筋を震わせる。まさかこんなことだけで軽く達してしまえるなど、彼女自身でも信じられぬことであった。
「あ……」
息を整えていたアレースとウェヌスが、やがて二人で握りしめていた星銃の変化に気が付いた。
それは普段からアレースが使う武器とは明らかに異なっていた。個人が手で持てるような拳銃ではなく、もはや小型の砲とでも呼ぶべきものへと変じている。ずっしりとした質量は、二名以上でなければ支えられないと実感させる。
「これが」
「わたくし達の」
両者の魔力は同調し、形成された武器は静かにたたずんでいる。
二人は声に出して確認することすらせず、その銃口を、先ほど魔力弾を弾いてみせた扉へと向けた。
放たれた強大な閃光が、ロッカーを包んでいた膨大な魔力の塊を消し飛ばす。リリーの能力を特化させ、限界までつぎ込まれていた力。
それまでの敵とは比較できぬほどの堅牢さを誇っていたにも関わらず、失せる時は刹那だった。
閉じ込められていた二人が、術者の前へと姿を現す。
渾身の能力を無に帰されたリリーが、それ以上その場を切り抜ける道理も意味もなく。
そして、その日もまたテレストライアルたちの勝利で終わった。
一つの難関を越え、新たな力を手にしたうえで。
しかし……。
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