一目見た瞬間、君に恋をした

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― 翌日 ―プロポーズ場所の小高い丘にて 「予定時間30分前に着いた! これで忘れ物してたとしても余裕で戻って来れる時間だな。最終チェック、と。念の為のメモと肝心の婚約指輪は〜あるな。 うん? 彼女からメッセージがきた。なんだろ? ……え!? もう着いてる!?〘景色が綺麗だから早めに出ちゃった。ゆっくり来てね〜(*ˊᵕˋ*)〙って、ヤバッ急がなきゃ! 」 僕は緊張や焦りのせいで、大事な事を忘れてしまっていた。 「はぁ、はぁ。お待たせっ」 「そんな急がなくても良かったのに〜」 「いやいや、夕方とは言っても女性1人で待たせるのは不安だし」 「うふふ。ありがとう」 「当然だよ」 「それで今日はどうしたの?」 「大事な話があって……」 プロポーズのメモの言葉を思い出そうとした瞬間、頭が真っ白になっていた。 なんだっけ?なんだっけ?初めて会った?好きなってくれてありがとう。だっけ?いや、この言葉は最後の方に言う言葉だ。 「なんか怖くなってきた。」 彼女の眉がみるみる下がり、泣きそうになっている。彼女は強がっているが、泣き虫なのだ。早く言わないと!婚約指輪の箱をポケットからだし箱を開き、 「僕と結婚してくれませんか!!!」 ええいよままよと言ってしまった言葉は、ロマンチックの欠けらも無い言葉だった。しかも、箱に入っていた指輪がない! 「はい。もちろんです」 「え? 本当に? というか、指輪! 」 「え? 確かに箱の中に何もないけど? 」 「さっき確認したのに! あれ? なんで? どうして! 」 「落としちゃったとか? 」 「さっき、ここに来るまではあったんだ」 「じゃ、探そうよ! 」 そう言う彼女が眩しかった。僕がどうしようもないプロポーズをしたのにもかかわらず、彼女は受け入れ僕と結婚してくれると言うのだ。 決して、彼女に夕日がさして眩しいという意味ではない。 小一時間探し歩いたが、夜になってしまい探すことが難しくなった。 「ごめん! 本当にごめん! 」 「大丈夫だって。また、明日探そうよ 。確認してなかったみたいだけど、バッグの中とか見た? 意外とそういう所にあったりするし。」 「え、あ、確かに見てない! 」 ガサガサとバッグの中を探ると、探していた指輪があった。焦りと緊張で箱に入れ忘れているだけだったのだ。 「……ごめん。あった。」 「アハハハハハッ、ほらね! やっぱり! 」 こうやって、長い時間掛けて指輪を探してくれた彼女が好きだ。僕の失敗すら笑い飛ばしてくれる彼女が大好きだ。 準備したメモ書きなんていらない。 今なら僕の思いを、どれだけ彼女を大切に思ってるか愛しているかを伝えられる。 僕は跪き、 「一目見た瞬間から、初めて挨拶を返してくれた瞬間から、初めて僕に笑いかけた瞬間から君に何度も何度も恋してた。 ……今日こうやって指輪がない。ってなった時も、呆れることなく、もちろん結婚するって言ってくれた。 こんな僕を好きになってくれてありがとう。今までもこれからも、ずっとずっと大切で愛おしい存在だよ。これからも、そんな優しい君を僕の一生を掛けて愛し続けると誓います。僕と結婚してくれませんか? 」 彼女の返事は、少し涙を流しながらのYESという返事だった。 「高校の時も同じことあったよね〜。ちゃんとメモしたのに、文章が思い出せなくなってさ。好きです。って聞こえるか聞こえないかの小さな声でさ。ちゃんとメモ見せてもらって感動したけど! 」 「もうそれは時効だろ〜。それに今日はリベンジできたし? 」 「リベンジって〜、もう! 」 「成長しただろ?」 「はいはい。お互い大人になりましたね〜」 そうなのだ。彼女が話題に出したのは、高校生の時の僕の恥ずかしい記憶。 僕は高校生の時も告白の準備は完璧、暗記もバッチリで告白に挑んだのにも関わらず、彼女を目の前にした途端、覚えていた文章を忘れ、メモの存在すらも忘れ、緊張のあまり小さな小さな声で、「好きです」と言うのが精一杯だった。 彼女はそんな僕を笑いもせず、「私も好きです」と返してくれた。 昔は早く忘れてくれと頼んだものだが、大切な思い出だから却下とにべもなく返されてしまう。 そんな僕の欠点さえも、大切だと、好きだと言ってくれる。 彼女となら、彼女だからこそ、僕は一生を共に歩んでいけると確信している。 彼女と出会えて良かった。
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