狂気に沈む地の底から

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「いやいやいや、それでも魔王様がこの猛者ひしめく魔王城の中でも最強だということは変わりありませんよ」  部下Aに精一杯の気を使われる。気を使わせてしまって申し訳ないとすら、魔王は思えてきた。 「それに体調とかありますから、魔王様、寝起きみたいですし、完調時であればもう、ぶっちぎりなのは明白です」  部下Aも、こんなに魔王と肉薄しているとは思ってもいなかったのだろう。不甲斐ない自分を許してほしいと、魔王は心の中で謝った。  しかし、部下を不安にさせてしまうのも、良い上司とは言えない。常に堂々とし、部下に不安を与えないことも、できる上司の務めなのだと、魔王は自己啓発本で学んでいた。  なので、魔王は心を無理矢理奮い立たせ、虚勢を張ってみせる。 「ま、まぁそうね。ちょっと寝不足だし、そういうところはあるのかもしれない」 「ですよね。今度は熟睡後に計りましょう」  魔王は部下Aの心遣いに、少し救われる。自らを奮い立たせるため、魔王はもう少し虚勢を張った。 「あと下痢気味だし」 「それは本調子ではないはずだ。整腸剤買ってきます!」  魔王は続ける。 「あとなんか肩痛いし、老眼入ってきたし」 「じゃあ眼鏡買えば8倍は固いっすね!」
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