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「おにぃーちゃーん! いま、どーこー!」
知ってるけどね。
アタシは駅舎の脇の柵の金網に背伸びしながら顔を押し付けて、駅の中を覗き込みながら叫んでいる。
アタシの脇では飼い犬の秋ちゃんがお座りしていた。
秋ちゃんを連れているから駅舎の中に入れないんだけど、秋ちゃんの散歩って名目でお兄ちゃんを迎えに来ているから文句は言えないんだ。
向かい側のホームに止まっていた電車が発車し、降車した乗客が陸橋を渡りゾロゾロ階段を下りてくる。
陸橋を渡った乗客がアタシの直ぐ前のホームを歩き改札口に向かう。
あ! いた。
お兄ちゃんとお兄ちゃんの彼女のお姉ちゃんが、仲良くお喋りしながら階段を降りホームを歩いて来る。
「おにーちゃーん!」
声を掛けたら気がついてくれた。
「アレ、また来てたのか?」
「ウン」
改札口を通りお兄ちゃんとお姉ちゃんが駅舎から出てきて声を掛け合っている。
「私はバスで帰るから此処でお別れね。
じゃあね」
「ごめんな、送って行けなくて、ウン、また明日」
やったね。
お姉ちゃん良い人なんだけど、でも、お兄ちゃんにはアタシだけを見ていて欲しいんだ。
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