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1 フルーラの願い
ペントスの姫は持参金要らず
黄金の輝き 宝石の笑み
色とりどりの花が舞う
◇ ◇ ◇
「苦情でも言いに来たのか」
苛立った様子で応接間に入ってきた公爵令息リシャード・クルシュから開口一番そう言われ、ペントス王国第三王女フルーラは不思議そうに目を見開いた。
「苦情……?」
深夜の急な来客に慌てて寝間着から着替えたのか、リシャードの暗めの金髪は少し乱れている。
フルーラは少し考えた後、「そんな、苦情だなんて」と、寛容さに満ちた笑みをたたえた。
「全部許してるから安心して。五歳のときに池に突き落とされたことも、六歳のときにカエルがギッシリ詰まった箱をもらったことも、七歳のときに大きな毛虫を手に握らされたことも、八歳のときに甘い飲み物だと騙されて苦い草のしぼり汁を飲まされたことも、もうとっくにすべて水に流してるわ」
リシャードは訝しげに眉を顰める。
「――聞いてないのか?」
「何を?」
困惑の色を浮かべながら、リシャードはフルーラの向かい側の長椅子に腰を下ろした。
「だったらなんで来た」
「な、なんでって……」
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