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リシャードはひとつ溜め息をつくと、自嘲気味に呟いた。
「君の最初のダンスの相手にはなれなかったけど、最初の男としてはお声が掛かったんだから、光栄だと思うべきなんだろうな……」
「ね、ねえリシャード」
フルーラは困惑しきりといった様子で訴える。
「どうしてそんなややこしい受け取り方をするの? さっき大きな声で伝えたばかりよね? 私は、あなたのことが……」
「――悪いけど」
リシャードはフルーラの方を見ずに遮った。
「君が僕を好きだなんて信じられないよ。長い間、あんなにあからさまに避け続けておいて」
「だからっ、それには理由があったの。言ったでしょう? お花が出るのには条件があるって……!」
フルーラはリシャードの肩に手を置いて腰を浮かせると、ぎゅっとまぶたを閉じ、唇で彼の頬に触れた。
「っ……!?」
その途端、野ばらに似た可憐な花が、綿雪のようにいくつもいくつも降ってくる。
目を丸くしたリシャードが見たフルーラの顔は、染め上げたように真っ赤になっていた。
「ときめくと……出ちゃうの」
フルーラの碧色の瞳が、恥ずかしさで潤む。
「だからずっと、あなたのそばに近寄れなかったのよ」
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