4 近寄れなかった理由

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 リシャードはひとつ溜め息をつくと、自嘲気味に呟いた。 「君の最初のダンスの相手にはなれなかったけど、最初の男としてはお声が掛かったんだから、光栄だと思うべきなんだろうな……」 「ね、ねえリシャード」  フルーラは困惑しきりといった様子で訴える。 「どうしてそんなややこしい受け取り方をするの? さっき大きな声で伝えたばかりよね? 私は、あなたのことが……」  「――悪いけど」  リシャードはフルーラの方を見ずに遮った。 「君が僕を好きだなんて信じられないよ。長い間、あんなにあからさまに避け続けておいて」 「だからっ、それには理由があったの。言ったでしょう? お花が出るのには条件があるって……!」  フルーラはリシャードの肩に手を置いて腰を浮かせると、ぎゅっとまぶたを閉じ、唇で彼の頬に触れた。 「っ……!?」  その途端、野ばらに似た可憐な花が、綿雪のようにいくつもいくつも降ってくる。  目を丸くしたリシャードが見たフルーラの顔は、染め上げたように真っ赤になっていた。 「ときめくと……出ちゃうの」  フルーラの碧色の瞳が、恥ずかしさで潤む。 「だからずっと、あなたのそばに近寄れなかったのよ」
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