4 近寄れなかった理由

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 呆然と瞬きを繰り返すリシャードの周りを、ふわふわと花が舞う。 「――最初にお花を出したのは、あなたが初めて剣の模擬試合に出たときだったわ」 「……たしか……十一になる年だったっけ……」  驚き醒めやらぬ様子のまま、リシャードは記憶をたどった。 「……僕は、最年少の部門で優勝して……ご褒美にもらった小さな勲章を君に見せたくて……」 「すっごく強くてかっこよかったから、試合の後、あなたはたくさんの貴族の女の子たちに囲まれてたわ。なのに、遠くにいた私を見つけて、嬉しそうに大きく手を振ってくれたのよ。……そしたら、胸がきゅっとなって」  初めての花は、純白の花びらに一刷毛(ひとはけ)の紅色が入っていた。  そのときの気持ちを思い出したせいか、似たような花たちがフルーラの周りに現れ、くるくると回りながら落ちていく。 「一輪だけだったから、私の他には一緒にいたマイアしか気がつかなかったんだけど、私、すっかり動転しちゃって」 「目が合ったと思ったのに、君はぷいっとどこかへ行っちゃったよな。それから……どんどん冷たくなって」  ごめんなさい、とフルーラは謝った。 「お姉さまがたには嫁ぐまで好きな人はいなくて、物語や劇に出てくる男性に時々どきっとするくらいだったから殆ど支障はなかったのに、私はあなたのことを考えるだけでぽんぽんお花が出るようになっちゃって、とても困ったわ……」
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