32人が本棚に入れています
本棚に追加
6 鼓動
「……あ……!?」
フルーラはハッとしたようにリシャードを見る。
「僕に花は出せないけど、これで判るだろ?」
手のひらから感じるリシャードの鼓動は、有事のときに撞かれる早鐘のように激しいものだった。
「一方的なんかじゃない……。ルラ、僕も君のことが好きなんだ」
口を半開きにして固まったままのフルーラに、リシャードはもう一度はっきりとした口調で告げる。
「僕の方がきっと、君よりもずっと前から好きだった」
ぶわっと派手に現れた新しい花たちがくるくると舞い始めると、突然リシャードは長椅子からフルーラを抱き上げた。
「きゃっ、リ、リシャード……!?」
いたずらっぽい眼差しでリシャードはフルーラの顔を覗き込む。
「……『さすがに、この応接間じゃ』」
これからどこに向かおうとしているのかをフルーラが理解すると、顔の色にそっくりな赤い小花がどっと降ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!