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橙色の細かい花が散り、どこかほっとしたようなリシャードの声が上がる。
「――ああ、朝露が降りた花みたいだ」
「見ないでっ」
「薄暗いし、そんなにはっきりとは見えないよ」
閉じようとするフルーラの脚の間に、リシャードは身体を割り込ませた。
「あっ……」
露をこぼす場所にリシャードの指先が触れると、フルーラはびくっと身体を揺らした。
ふっくらとした花弁の薄紅色の花たちがくるくると降ってくる。
「いやあ……っ」
羞恥に染まったフルーラが身を硬くすると、「ルラ」とリシャードは優しく声を掛けた。
「思い出に残る夜なんだから、『いや』じゃなくて『好き』って言ってくれよ……」
フルーラの花芯のすぐそばでリシャードは囁く。
「大好きだよ、フルーラ」
「あ……」
『思い出に残る夜』――そう、今夜はリシャードと過ごすことができる最初で最後の夜。
二度とは持てない二人きりの時間を共にしているのだと改めて痛いほど感じたフルーラの瞳には、新しい涙が浮かんでくる。
「……リシャード」
閨で愛しい名前を呼べるのもこの一夜だけ。フルーラは膝の力を緩めた。
「大好き……」
それに応えるように、リシャードはフルーラの敏感な部分を舌でくすぐる。
「ああっ……、すき……好きっ」
フルーラは、自分が頭を乗せている枕の端をぎゅっと握った。
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