8 最後の花

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「んぅ……」  覚悟はしていたが、大きな圧迫感にフルーラは少し怖気づき、リシャードの腕にしがみついた。 「ゆっ、くりするから……」  ごく浅いところを行きつ戻りつするリシャードの切なそうな息づかいに気がついたフルーラは、心を決めたように(こいねが)った。 「……リシャード、ひとおもいに……来て」 「ルラ……?」 「そうして欲しいの」  透き通るような碧色の瞳で、フルーラは愛する人を見つめた。刻み込んで欲しい。何もかも一生忘れないように。 「いいのか……?」  フルーラは頷いて微笑む。 「リシャード、好き。今夜だけじゃ言い足りないくらい、大好き……」  リシャードはフルーラの蜜にまみれた小さな芽に指を伸ばし、可憐な花をいくつか舞わせる。 「あッ……」 「フルーラ、大好きだ」  そう囁くと、リシャードは細腰をしっかりと掴み、愛する人の望みどおり一気に貫いた。 「っ…………!」  悲鳴も上げられないほどの衝撃に、フルーラは目をぎゅっと閉じて細い首をのけぞらせる。  紅い大輪の花がゆっくりと宙を漂い、ぽとりと寝台の上に落ちた。まるで破瓜の証のように。 「……ルラ……」  リシャードが心配そうにフルーラの髪を撫でるとまぶたが開き、涙をためた碧い瞳が現れた。 「やっぱり辛そうだ」 「……でも、すごく幸せ……」  リシャードがフルーラを抱きしめると、フルーラも汗ばんだ背中に腕を回した。滑らかな素肌の触れ合いが、少しずつ痛みを和らげていく。  ずいぶんと待った後、ようやくリシャードはフルーラを揺らし始めた。 「あっ、あ、リシャード……」  新しい花はもう現れなかったが、二人はお互いの手をしっかりと握り合い、花々の香りに包まれながら一緒に高みへと昇っていった。
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