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困惑するフルーラに、リシャードは可笑しそうに訊ねる。
「君は、陛下たちが縁談について話していらしたのを立ち聞きしたんだっけ?」
「そ、そうよ」
「でも、どこに輿入れするかってところまでは聞いてないんだ?」
「……ええ」
フルーラは悲しげに目を伏せた。
『あちらは是非にとのことだ』
『まあっ。ルラの気持ちは聞くまでもないけど、明日にでも本人に話しましょう』
『さっそく準備を進めることにしよう』
『ええ、これ以上はない良縁ですものね!』
などという両親の会話が耳に飛び込んできて、あまりの衝撃にフルーラはその場を足早に立ち去ったのだ。
政略結婚を進める際には、当人の意向など『聞くまでもない』のだと思い知らされながら。
「その輿入れ先がどこなのか、僕は知ってるよ」
「えっ……?」
リシャードの父は外交に明るく、時には異国との折衝も担っている。やはり外国に行かされるのだろうかと、フルーラは身を固くした。
「君が嫁ぐのは、ヴァレオン公爵家の長男のところだ」
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