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フルーラは目を見開く。リシャードの父はヴァレオン公爵で、息子は彼ひとりだけだ。
「えっ……?」
「僕の想いを知る父が、『砕けてもいいのなら当たってやろう』と陛下に打診してくれたら、意外なことに色よいご返事をいただけてね。あとは本人の意思に任せると。父は『全ての姫君を遠方に嫁がせるのは、さすがに国王陛下ご夫妻もお寂しいんだろう』って言ってたな」
『ルラの気持ちは聞くまでもない』という言葉を間違って解釈していたことに、フルーラは気づく。そういえば父も母も妙に嬉しそうに声を弾ませていた。
フルーラは必死で隠そうとしてきたが、リシャードのことを見たり考えたりしたときだけ花が出てきてしまうということを、両親は以前から薄々勘づいているふしがあった。
「で……でも、あなただってさっき、『思い出に残る夜』って……」
「二人で過ごす初めての夜なんだから、それはそうだろう?」
リシャードは笑い話のように楽しげに語った。
「最初から何だか会話がかみ合わなくて、途中で君が他所に嫁がされると誤解してるって気がついたんだけど、君に触れたとたん全部ぶっ飛んじゃって……伝えるのをすっかり忘れてたよ」
フルーラはわなわなと怒り出す。
「ひ、ひどいわ。私は、胸が張り裂けそうな思いで……!」
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