30人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
リシャードは煩わしそうに首を振る。
「なんでそっちが泣くんだ。もう君の気持ちは伝わったから、改まって言わなくてもいい」
フルーラはきょとんとした。
「私の気持ちが……伝わったの?」
「ああ」
リシャードは深いため息をつく。
「僕は受け容れるしかない」
フルーラは半信半疑といった様子で確かめる。
「受け容れて、くれるの……?」
「――仕方ないだろう。君の意向が何よりも大切なんだから」
「本当に……? いいの?」
リシャードは絞り出すように答えた。
「……いいよ」
フルーラは声を震わせる。
「そんなに嫌そうなのに……ありがとう」
「……礼なんて言わないでくれ」
二人の間をしんみりとした空気が漂う。
リシャードが乱れる心を必死で抑え、マイアの迎えを待たずにフルーラを速やかに王宮まで送り届ける手筈を考え始めたときだった。
「それで……あの、寝室はどこ?」
遠慮がちに発せられたフルーラの問い掛けに、リシャードは耳を疑う。
「……は?」
フルーラは気まずそうにあたりを見回した。
「さすがに、この応接間じゃ……」
「何を言ってるんだ?」
リシャードの厳しい口調に、フルーラはしょんぼりと肩をすぼめた。
「そうよね、ごめんなさい。……わがままは言わないわ」
そして、フルーラは思い切ったように顔を上げ、きっぱりと告げた。
「ここでいいから、抱いてください」
最初のコメントを投稿しよう!