1 フルーラの願い

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 リシャードは煩わしそうに首を振る。 「なんでそっちが泣くんだ。もう君の気持ちは伝わったから、改まって言わなくてもいい」  フルーラはきょとんとした。 「私の気持ちが……伝わったの?」 「ああ」  リシャードは深いため息をつく。 「僕は受け容れるしかない」  フルーラは半信半疑といった様子で確かめる。 「受け容れて、くれるの……?」 「――仕方ないだろう。君の意向が何よりも大切なんだから」 「本当に……? いいの?」  リシャードは絞り出すように答えた。 「……いいよ」  フルーラは声を震わせる。 「そんなに嫌そうなのに……ありがとう」 「……礼なんて言わないでくれ」  二人の間をしんみりとした空気が漂う。  リシャードが乱れる心を必死で抑え、マイアの迎えを待たずにフルーラを速やかに王宮まで送り届ける手筈を考え始めたときだった。 「それで……あの、寝室はどこ?」    遠慮がちに発せられたフルーラの問い掛けに、リシャードは耳を疑う。 「……は?」  フルーラは気まずそうにあたりを見回した。 「さすがに、この応接間じゃ……」 「何を言ってるんだ?」  リシャードの厳しい口調に、フルーラはしょんぼりと肩をすぼめた。 「そうよね、ごめんなさい。……わがままは言わないわ」  そして、フルーラは思い切ったように顔を上げ、きっぱりと告げた。 「ここでいいから、抱いてください」
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