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2 わたしを見て
「……はあ……?」
ぽかんと口を開けたリシャードを見て、フルーラは頬を赤らめた。
「ひ、人目につくような場所だったら嫌だけど……」
石化する魔法でもかけられたかのようにしばらく固まっていたリシャードは、やがておずおずと訊ねた。
「だ、抱くって……?」
「えっ、私の気持ちは伝わってるって言ったわよね?」
「理解していたつもりだったんだが……。抱くって、まさかと思うけど、肌を合わせること……じゃないよな」
「そ、それだけど」
「は? 誰と……誰が?」
「――他に誰がいるっていうの?」
今度はフルーラが焦れたように語気を強めた。
「あなたと私が、よ!」
リシャードの口から、気の抜けたような声が出る。
「……なんでそうなるんだ……?」
フルーラは「やっぱり解ってなかったんじゃない」と、泣き出しそうな顔になった。
「なんでって、それは、私があなたのことを……」
途中から極端に小さくなった声は、リシャードの耳には届かなかった。
「えっ、今なんて……」
フルーラはキッとリシャードを睨むと、自棄になったように大きな声を出した。
「私が、あなたのことを、好きだからでしょうっ!」
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