2 わたしを見て

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 リシャードは再び呆然として立ちすくんだ後、はたと我に返り、「いやいや待て待て」と、フルーラの向かい側に座り直した。 「君が僕のことを好きっていうのは、さすがに無理があるだろう」 「どうしてよ?」 「小さい頃、僕は君を泣かせてばかりだったし」 「度を越した悪ふざけは時々あったけど、もう許してるって言ったでしょ。のろまな私のことを見限らずに、いつも一緒にいてくれたじゃない」 「でも、十歳を過ぎたころからは、無視されたり避けられたりするようになったし」 「そ、それは……」  リシャードの瞳が哀しげに(かげ)る。 「君が初めて舞踏会に出席したときだって」 「……あ」 「そっけなくダンスを断られたよな……」  王女の最初のダンスは、それなりの家柄の同年代の男性が申し込むのが慣例だ。  公爵家令息のリシャードなら申し分のない相手だったはずなのに、フルーラは冷たく顔をそむけて誘いを断ったのだ。  リシャードの心の中には、そのときの痛手が今も古傷となって残っている。 「ご、ごめんね……。あれには理由があったの」 「どんな理由だよ」  フルーラは睫毛を伏せて、恥ずかしそうに訊ねた。 「……そばに、行ってもいい?」 「え……」  返事を待たずにフルーラは立ち上がると、リシャードが座っている長椅子まで歩いてきて、すぐ隣に腰を下ろした。 「えっと、それで……」  フルーラはぎこちなくリシャードの方に顔を向ける。 「私を見てくれる……?」
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