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意図が解らないまま、リシャードは怪訝そうにその琥珀色の瞳にフルーラを映した。
古くからの伝承歌にも「持参金要らず」と謳われているように、この国の王家の姫君たちは代々匂い立つような美形揃いで、フルーラもその例外ではない。リシャードの目はすぐに釘付けになった。
輝きを集めるように波打つ、甘い色合いの金髪。
匠が手掛けた最高級の人形のように端正な輪郭。
長い睫毛に縁取られた、吸い込まれそうな碧い瞳。
きめ細やかな乳白色の肌に、柔らかな薔薇色を溶かしたような頬と唇。
何年も遠巻きに眺めるだけだったフルーラが、年月を経て美しさを増してこんなに近くにいることが、リシャードには信じられなかった。
懐かしくもあり、新鮮でもあり、リシャードが眩しそうな表情を浮かべたそのときだった。
ふわんと甘い香りがしたかと思うと、短く手折られたような薄紅色の可愛らしい花が、リシャードの目の前をひらひらと落ちていった。
「……なんだ……?」
足下に落ちたそれを拾おうと身をかがめたリシャードの髪の毛が、フルーラの頬を軽くかすめる。
「きゃっ」
今度は、丸い花弁をした水色の花がいくつかぽんぽんと降ってくる。
「……奇術でも習ったのか?」
目を丸くして訊ねるリシャードに向かって、フルーラは残念そうに首を横に振った。
「やっぱり気持ち悪いわよね。……体質なの」
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