3 持参金要らず

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「でも、僕は小さいころしょっちゅう君と一緒にいたけど、こんな現象は一度も見たことがないぞ」 「……条件があるのよ」  その〝条件〟には触れずに、フルーラは話を続けた。 「『あなたはお花で良かったわね』ってよくお姉さまたちから言われたわ。いくら珍しいものでも、私のお花は時が経てば色あせて枯れていくけど、(きん)や宝石はそうはいかないし、高値で取り引きされるものでしょう」  フルーラの表情が少し曇る。 「お姉さまたちは今はとても幸せに暮らしていらっしゃるけど、過去にはその体質を悪用されそうになったこともあったのよ。真珠が出せたというペルーラ叔母さまも、昔は何度か危ない目に遭われたんですって」  リシャードは、第一王女が一度離縁していることや、第二王女が誘拐事件に巻き込まれたことがあったのを思い出した。 「『持参金要らず』の歌が聴こえてくると、よくお父さまは面白くなさそうに『しっかり持たせてるぞ……』って小声でおっしゃってるわ」  持参金を持っていこうが、姉姫たちは嫁ぎ先から童話に出てくる黄金の卵を産むガチョウのように見なされているのではないかとリシャードが心配そうな顔をすると、フルーラは「大丈夫よ」と微笑んだ。 「今はお幸せだって言ったでしょう。それに、お姉さまたちはもうとっくに(きん)や宝石を出せなくなってるのよ」 「そうなのか? 君の花も、いずれは出なくなるのか?」 「……そうね」  言いにくそうに下を向き、フルーラは打ち明けた。 「あの、この体質は……処女(おとめ)でなくなると終わるの」
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