32人が本棚に入れています
本棚に追加
4 近寄れなかった理由
うつむいたままのフルーラの耳が赤く染まる。
「だ、だから、結婚して子宝にまで恵まれたお姉さまがたは、もう体質を悪用される心配はないのよ」
手のひらの上の薄紅色の花を眺めながら、しばらく考え込むような顔をしていたリシャードは、ふっと口許に皮肉な笑みを浮かべた。
「ああ、それで君は……」
驚くほどひんやりとした声だった。
「その特異体質を終わらせるために、幼なじみの僕を使おうと考えたわけか」
「えっ……?」
訝しげにフルーラが顔を上げると、リシャードの冷たい横顔が目に映った。
「陛下に忠誠を尽くしている公爵家の息子なら、国益にならないようなことは決して口外したりしないしな」
「な、何を言いたいのか解らないんだけど」
「君は自分の体質のことを『気持ち悪い』なんて言ってたし、姉上たちのように大変な思いをしないためにも、ごく普通の身体になっておいてから、人生を共にする男のもとに嫁ぐつもりなんだろう?」
「は……?」
最初のコメントを投稿しよう!