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王子はその翌日には、片方の目のサファイアを、さらに翌日にはもう一方のサファイアを貧しい人にあげてほしい、と言った。
目が見えなくなるだろ!と主張したが、それでいいということだった。
この人ってなんて馬鹿なんだろう。こんなことをして知らなかったことへの罪滅ぼしでもするつもりなのか?
なんだかほっとけない気持ちになって、しばらくそこに残ることを決めた。王子にはエジプトに行け、と言われたけど、王子の目の代わりとして働くことにした。
暇な時間には今までの旅行の話を聞かせて、町の様子を見に行って、そんな感じだった。
王子は俺の話も衝撃的だが、この地で起きている現実の方がよっぽど衝撃的なんだ、といつも言った。
実際、この町の貧富の差は激しくて、お腹を空かせた様子の子供も少なくない。
それを報告するたびに、王子は自分の体に張られている金をその子たちに与えてほしいという。
子供たちの笑顔が増えるのに伴って王子はどんどんとみすぼらしい姿になっていった。
しかし、それでも、いや、みすぼらしくなればなるほど彼は誇らしげになっていく。
まったく、この人には勝てないな、そう思いながら、日々配り続けた。
そんなうちに、王子の体に付いていた金は全て剥がれ、灰色になった。
それでも、王子の元を離れはしなかった。たぶん、この人の馬鹿みたいにまっすぐなところに惹かれてしまっていたのだ。
葦の時には旅行したいから、って別れたのに、自分が離れたくないからって、旅行をやめることになるとは思わなかったな。
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