02.3980円

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「単刀直入に訊くが、あのお札はどこで手に入れたんだい?」 「木根さん、でしたっけ?」 「あぁ」 「木根さんは自分の財布に入ってるお金がどこのお釣りか、いつから入ってるか覚えてるんですか?」 「では、意図して手に入れたものではなく、いつの間にか持っていた。と?」 「はい」 「不思議に思わなかったのかい?」 「何がですか?」 「渋沢栄一の1万円札が財布に入っていたんだぞ」 「だから、それのどこが不思議なんですか?」 多少は苛ついているようだ。 「だいたい、酷いもんですよ。僕の万札を没収したまま返してくれないんですから。 死活問題ですよ。1万円なんて大学生には大金なんですから。 警察が都民の金を盗んだと記事にして欲しいくらいです」 どうも話がかみ合わない。 この饒舌さは、嘘故なのか、生来のものなのか。 もう少し揺さぶる必要がある。 幸い、ここは彼の自宅だ。 喫茶店などと違って、逃げられることはない。
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