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「木根さんの方こそ、偽500円じゃないんですか?」
彼は俺が渡した500円硬貨を検分するように回転させながら見ていた。
そうか、旧500円硬貨の製造は2000年までだ。
彼が生まれる頃には、現行の2代目500円硬貨の製造が開始されていた訳だ。
流通量が減り、初代500円硬貨を見る機会は少なくなった。
偽札を追って来た俺の方が、偽硬貨疑惑を持たれるとは、何とも皮肉だ。
「今の500円は2000年から製造されはじめたものだ。これはそれ以前のものだ」
「500円玉もマイナーチェンジしてたんですか? ギザ10なら知ってますけど」
「硬貨は結構変わっているよ。古い5円はゴシック体ではなく楷書体だし、
古い100円に描かれているのは桜花ではなく稲穂や鳳凰だ」
説明しながら、彼は二千円札なんて見たことがないのかも知れないな、と思った。
それこそ、偽札ではないか? と騒ぎそうだ。
そう考えると、尚更疑問が深まるのだ。
まだ流通していない渋沢栄一の1万円札とあり得ない年号が刻印された500円硬貨を持ちながら、ごく自然と振る舞う若者。
一方で、旧500円硬貨を偽硬貨と疑う若者が同一人物とは。
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