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ローテーブルの上には2枚の500円硬貨。
「こうして見ると、昔の方は白っぽいんですね」
「そうだ。素材が違う」
「どうして、デザインだけではなく、素材も変えたんですか?」
乗りかかった船だ。
いや、この場合は、行き掛けの駄賃というべきか。
俺は大学生に講義を行った。
1990年代後半から、韓国の500ウォン硬貨――当時のレートで約50円――を変造した軽犯罪が多発した。
変造硬貨事件、或いは500ウォン事件と呼ばれていた。
500ウォン硬貨は500円硬貨と比べてやや重いものの、直径と色は同じだった。
そのため、当時の自動販売機では500ウォンの表面に十数か所の穴を掘ったり、削ったりして質量を減らすだけで、騙されてしまったのだ。
俺自身、高校生の時に近所の自販機で炭酸飲料を買ったお釣りの中に変造500ウォンが紛れており、衝撃を受けた。
今思えば、あの経験が捜査二課を目指した原点だったかも知れない。
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