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「エラー紙幣でもなかったんだよ。そもそも会計さえしていない」
「店員が見破ったってことか? 待てよ。スーパーコピーレベルだと言ったよな?」
「あれは……スーパーコピーというよりは、本物だったんだ」
「小室。お前、もう酔ってんのか?」
「酔いたくもなるよ」
小室はスマホの画像を俺に見せた。
画面に映る1万円札。
その後ろで鋭い目で俺を睨んでいる小室。
いや、自分のスマホを睨みつけているのかも知れない。
斜視である小室の目はそれぞれを睨んでいるようにも見える。
「おい、これって……」
「そうだ。偽造通貨とは呼べないだろ?」
酔いたい小室と対照的に、俺は一瞬で酔いがさめた。
スマホに映っていたのは、2024年に発行される予定の『渋沢栄一』の1万円札だったのだから。
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