02.3980円

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02.3980円

嘘を吐いたような昼の月が上空にあるはずだ。 見えていないだけで存在している。 見えないものをあると言ってしまえば、逆にこっちが嘘つき呼ばわりだ。 俺は小室との会食を思い出しながら、目的地に向かっていた。 昨夜、漆黒を従えた夜の月は、歌舞伎町を歩く俺など無関心に思えた。 夜が明けた今は尚更無関心だろう。 姿さえ現さないのだから。 なぜ、前科もない普通の大学生が偽札を持っていたのか? なぜ、精巧な偽札をつくる技術を持ちながら、流通していない紙幣を選んだのか? 俺は自分の目で確かめるつもりだ。 目で見たものしか信じない。 これは、刑事時代も記者である今も変わらないポリシーだ。 使用未遂で押収された偽札は、科警研に送致された。 真贋鑑定を行うまでもないが、調査が必要だからだ。 結果、国立印刷局の技術者も交えた鑑定結果は『真札』だった。 今年――2021年――9月1日から印刷が始まったため、紙幣としては存在している。 印刷局から流出したという見解で落ち着くはずだった。
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