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「夏奈…今日はありがとう、あの…前に君が食べたがってた駅前のケーキを、買ってきた…ん、 …え…?…」彼が、ゆっくりと顔を上げる。
彼が、今ちまたで人気の1時間ほど並んでからしか買えないと言われている話題のパティスリーのケーキの箱を差し出してくれる…
彼のこんな気遣いが、私にとっていつも、胸きゅんポイントだ…。
「きゃ~~!前からここ…本当に気になってたんです、嬉しい~ありがとうございます。」私は即座にお礼を言う。
「 … え ?… … …えっと … あれ… …?ここは……あれ…?」
彼の驚いたような表情…
その後、彼は一旦ドアの外に出て、再び表札あたりを確認する素振り…
「…え…?何ですか…? ほら、上がってください…先輩!」
「 …すみません… あれ…えっと…俺、なんだか色々…間違ったみたいで…!失礼しました!」
彼が私をもう一度見て、ペコリと…頭を下げる。
なんで、いきなり敬語… ?
「先輩…?何、言ってるんですか…?ここ…私の部屋ですけど?だから、ね…そんなところに立ってないで早く入ってください…大丈夫ですよ?きちんと掃除してますから…いつも部屋は綺麗にしていないと私、落ち着かないタイプなんです…ケーキに合う美味しい珈琲をすぐに入れますから、先輩、入ってください。」
にっこりと極上の笑顔で、微笑む。
「あ、の…!ごめん、本当に…もう大丈夫です…お邪魔しました〜あ…ケーキは置いていきます!是非…珈琲と一緒に召し上がってください…では!失礼しますっ!!」彼は足早に去っていく…。
カンカンカン… 鉄筋コンクリートの階段に響く、彼の靴音…
先輩は普段、穏やかな人…
…なのに、いつもとはありえないようなスピードで、立ち去ってしまった…。
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