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「あの、本宮くん?」
私が呼ぶと、本宮くんは、クイっと繋いだ手を引いた。
私は、つられてそのまま、一歩、本宮くんに近づく。
ち、近い……
すぐ目の前に本宮くんのシャツのボタンが見える。
「俺さ、ほんとは、今日の応援合戦で優勝できたら、言おうと思ってたんだ」
えっ、何を?
私は本宮くんの顔を見ようとするけれど、上から見下ろす本宮くんと目が合って、慌てて顔を伏せる。
「小川、好きだ。この2ヶ月、一緒に過ごしてきて、小川のその一生懸命なとこ、まっすぐなとこ、全部が好きだと思った。だから、こんなイベントとは関係なく、俺と付き合ってくれないか?」
えっ、うそ……
私は信じられなくて、その場で固まってしまった。
だって、本宮くんなら、もっと可愛くてお似合いの子がいくらでもいる。
何も、私みたいに普通の女子を選ばなくても……
「小川、やっぱり、俺なんかじゃダメか?」
そう尋ねられて、我に返った。
私は、ぶんぶんと首を横に振る。
「ちがっ、本宮くんがなんで私なんかを選んでくれるのか分からなくて……。私なんかよりかわいい子はいっぱいいるのに……」
私がそう言うと、思ってもみない答えが返ってきた。
「小川はかわいいよ。誰よりも」
ぼっ!
一瞬で顔が燃えた。
まさかそんなことを言ってもらえるとは思ってなくて、もう、ドキドキが止まらない。
「小川、これからは、紗季って呼んでもいいか?」
そう尋ねられて、私はこくりとうなずく。
すると、繋いだ手はそのままに、右手でそっと抱きしめられた。
「紗季、好きだよ」
もう心臓が一生分働いたんじゃないかと思うくらい、ドキドキしてる。
私は、ぶらんとぶら下げた左手でそっと本宮くんの背中のシャツを握った。
私たちは、それから2日間、公然と校内で手を繋いで過ごし、3日目以降も、仲良く手を繋いで登下校するようになった。
そうして1年後。
再び訪れた文化祭で、私たちは、「次期」ではない、ベストカップルに選ばれる。
そしてその時の懐かしい写真の数々が、今、披露宴会場のスクリーンに映し出されている。
─── Fin. ───
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