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閉会式が終わると、明日の文化祭に向けての前夜祭が始まる。
前夜祭といっても、夕方4時から6時までの高校生らしい健全なイベント。
中庭の特設ステージから聞こえる賑やかな声を遠くに聞きながら、私と本宮くんはもう誰も残っていない教室に、2人きりで残っていた。
「あーあ、終わっちまったな……」
私の二つ前の席の机の上に腰掛けた本宮くんが独り言のように呟く。
「うん」
私は返す言葉もなくて、ただ相槌だけを打つ。
「3年生は競技にしか参加できないから、今年勝ちたかったんだけどな」
本宮くんの声は穏やかではあるけれど、言葉の奥に悔しさがにじみ出ているように感じる。
「うん」
私の相槌の後は、静寂が教室を支配する。
「でもね」
しばらくしてから、私は口を開いた。
「私は応援団ができて良かった。大変なこともあったけど、みんなで一つの目標に向かって頑張るのって、楽しかったし、充足感っていうの?なんか、こう、いい思い出になる気がする」
私は、拙い言葉を紡いで、彼に悔しさだけじゃない何かを伝えようと試みた。
本宮くんはそんな私に、ふっと優しい視線を投げて、微笑む。
「そうだな。小川とも他の応援団みんなとも仲良くなれたしな」
その笑顔はズルいでしょ!
照れ臭くなった私は、慌てて視線を逸らして、窓の外を眺める。
くっきりした二重まぶたが印象的な本宮くんは、うちの学校でも1、2を争うイケメンくん。
陸上部の彼は、背が高くて、足が速い。
そんなモテ条件をいくつも持ってる彼だけど、本当の良さはその中身だと思ってる。
だから、イケメンになんて興味のない私も、彼に惹かれずにはいられない。
当然、そんな彼に直接投げかけられる微笑みと真っ直ぐな視線には、とても耐えらるものじゃない。
「外、楽しそうね」
私は、照れをごまかすように呟く。
「ああ、そろそろ投票結果が出る頃なんじゃないか?」
本宮くんも窓の外に目をやって答える。
そういえば、実行委員が、事前に投票用紙を配ってたっけ。
文化祭中、ミス里高やミスター里高、ベストカップルなどを発表するらしい。
そのいくつもある結果のうちの一つを前夜祭で発表するって言ってた。
そういう人のルックスに全く興味のない私は、よく読まないまま、投票もしないで捨てちゃったけど。
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