81人が本棚に入れています
本棚に追加
ステージに上がると、どこからか、ヒュー!と指笛が鳴った。
「なんでここに呼び出されたか、薄々は察してますよね?」
司会者の男子が当然のように尋ねる。
「全然」
「まぁ」
私たちは同時に答えたけれど、本宮くんの反応は、私とは全く違う。
うそ!?
だって、さっき教室では分かんないって……
「あれ? 小川さんは分かりませんか?」
司会者が意外そうに尋ねる。
「はい」
なんで?
ステージ下からの視線が、なんだか普段とは違う気がする。
「じゃあ、本宮くん……ってめんどくさいな、真一、教えてやれよ」
どうやら、司会者は本宮くんの友達だったようで、突然、話し方が砕けた。
「は!? なんでだよ! それを言うのがお前の役目だろ」
普段おちゃらけてる本宮くんが、なぜか顔を真っ赤にして反論してる。
いつも怒ったりしないのに、どうしたの?
「しょうがないなぁ。小川さん、よく聞いてくださいね。お二人は、次期里高ベストカップルに選ばれました! 拍手!!」
司会者が煽ると、会場から大きな拍手が湧き起こる。
はぁ!?
ベストカップル!?
「ちょっ、ちょっと待ってください! あの、私たち、付き合ってませんよ!?」
噂にすらなってないのに、なんで!?
あり得ない称号にうろたえた私は、慌てて否定する。
けれど……
「あれ? 小川さん、もしかして、投票用紙の説明、読んでない?」
なに?
読んでないとダメなの?
「……はい、ごめんなさい」
「じゃあ、説明します」
そう言って、司会者は説明してくれた。
次期里高ベストカップルというのは、今は付き合ってないけど、きっと付き合ったら、来年のベストカップルになれそうな2人のことらしい。
「お2人には、文化祭が終わるまで、ずっと手を繋いで過ごしてもらいます」
は!?
司会者の言葉に、私は耳を疑った。
「ちょっ、それは!」
なんでそんなことしなくちゃいけないの!?
「全員に配った投票用紙に、ちゃんと書いてありましたよ。ねっ、皆さん?」
司会者が会場に問いかけると、皆がうんうんと頷く。
「だろ? 真一」
本宮くんはそう問いかけられて、
「ああ」
と渋々うなずく。
ええ〜!?
そんなぁ……
最初のコメントを投稿しよう!