負けた後に訪れる幸せ

5/8
前へ
/8ページ
次へ
ステージに上がると、どこからか、ヒュー!と指笛が鳴った。 「なんでここに呼び出されたか、薄々は察してますよね?」 司会者の男子が当然のように尋ねる。 「全然」 「まぁ」 私たちは同時に答えたけれど、本宮くんの反応は、私とは全く違う。 うそ!? だって、さっき教室では分かんないって…… 「あれ? 小川さんは分かりませんか?」 司会者が意外そうに尋ねる。 「はい」 なんで? ステージ下からの視線が、なんだか普段とは違う気がする。 「じゃあ、本宮くん……ってめんどくさいな、真一、教えてやれよ」 どうやら、司会者は本宮くんの友達だったようで、突然、話し方が砕けた。 「は!? なんでだよ! それを言うのがお前の役目だろ」 普段おちゃらけてる本宮くんが、なぜか顔を真っ赤にして反論してる。 いつも怒ったりしないのに、どうしたの? 「しょうがないなぁ。小川さん、よく聞いてくださいね。お二人は、次期里高(さとこう)ベストカップルに選ばれました! 拍手!!」 司会者が煽ると、会場から大きな拍手が湧き起こる。 はぁ!? ベストカップル!? 「ちょっ、ちょっと待ってください! あの、私たち、付き合ってませんよ!?」 噂にすらなってないのに、なんで!? あり得ない称号にうろたえた私は、慌てて否定する。 けれど…… 「あれ? 小川さん、もしかして、投票用紙の説明、読んでない?」 なに? 読んでないとダメなの? 「……はい、ごめんなさい」 「じゃあ、説明します」 そう言って、司会者は説明してくれた。 次期里高ベストカップルというのは、今は付き合ってないけど、きっと付き合ったら、来年のベストカップルになれそうな2人のことらしい。 「お2人には、文化祭が終わるまで、ずっと手を繋いで過ごしてもらいます」 は!? 司会者の言葉に、私は耳を疑った。 「ちょっ、それは!」 なんでそんなことしなくちゃいけないの!? 「全員に配った投票用紙に、ちゃんと書いてありましたよ。ねっ、皆さん?」 司会者が会場に問いかけると、皆がうんうんと頷く。 「だろ? 真一」 本宮くんはそう問いかけられて、 「ああ」 と渋々うなずく。 ええ〜!? そんなぁ……
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

81人が本棚に入れています
本棚に追加